INTERVIEW

『動物たち』リリース記念 照井順政 特別インタビュー <PART3>



──「教えて照井さん!」ということで、ファンの方から届いた質問の一部に応えていただけたらと思います。


Cingの楽曲制作で、最初にイメージしたポイント、とっかかりは何ですか?
(世界観、ことば、メロディー、サウンドなど)


照井:世界観はスタッフの方が作ってくれていました。それがとっかかりですね。僕が最初に着手したのはリズムと音色ですね。民族的な部分だったり、音色だったりを取り入れていくとろからはじめました。

──では続いての質問です。


照井さんの紡ぐことば、エモーショナルなメロディ、鮮やかなサウンドが一体化して描かれる世界が大好きです。その中でもCingでは特にサウンドやアレンジ、展開に強く惹かれます。サウンドやアレンジ、展開で拘ったポイントを教えてください


照井:無国籍的な雰囲気のあるリズム、音色を選ぶこと。音階もメジャー・スケールではなく、民族音楽などに使われる教会旋法を意識的に使ったりしています。Cingの場合は物語がある程度決まっていたので、映画的な感覚というか……Cingという映画の劇伴を作っているような感覚もありました。特に1曲目の『アイスクリーム/サイネージ』の歌がない部分は、劇伴のような雰囲気になっていると思います。その融合をこだわったという感じです。


普段の生活でどんな所から楽曲のヒントを得ることがありますか?


照井:文化一般や、生活の中で「どげんかせんといかん」と思うこともありますが……建築、絵画、いわゆるアートと呼ばれるものから直接的に影響を受けることがあります。最近はちょっと減っちゃいますけど、ハイスイノナサをやってたころは建築がインスピレーションの主なソースでした。

──もともと建築物がお好きだったんですか?

照井:そうですね。好きと気づいたのは20代に入ってからですけど。音楽専門学校に通っていたときに、新聞奨学生だったんですね。新聞を配る範囲が国会議事堂前だったんです。朝、その周辺で新聞を配っていても人っ子ひとりいなくて。ただ建物だけは異様に大きい。その心象風景と言うんでしょうか。人のいない都市の感じ、そこで見た巨大な建築物に触れる中で「こういうの好きかも」と。それで建築家を調べるようになりました。ディストピアが好きなのも似た感じですね。もちろんあんな未来はきてほしくないんですけど惹かれてしまうものがあります。

──今のお話に通ずるところがあるように思うのですが、質問の中にも未来に関するものがありました。


Cingの楽曲からは、どこか懐かしい未来を感じます。照井さんの感じる懐かしい未来とはどんなものでしょうか?


照井:懐かしい未来か……難しい質問ですね。自分がリアルタイムで感じたことではないですけど、アポロ計画あたりの時代を生きていた方が未来を夢見ていた感じ。それが自分にとっての懐かしい未来のイメージです。当時は未来に対して基本的に明るい印象を持っていたように感じます(自分の思い込みかもしれませんが)。自分の生活の中では、個人的な未来を夢想することはあっても、社会の未来を考えたりはあまりしてこなかったです。

──面白いなと思ったのが記憶に関する質問です。


記憶を失って目覚めたとしたらまず何をやると思いますか?


照井:なんだろうな(笑)。僕の場合は、持ち物を確認するかな。名前が書いてあるかもしれないから。そう考えると、やはり名前って重要なのかもしれないな。

──では最後の質問です。


独特の歌詞はどうやって浮かんできますか?


照井:自分の歌詞の独自性が自分だと分からなくて。でも自分の歌詞って言葉遊びや韻から作っていくようなものは少なくて。元になっているのは、生活のなかでの問題意識が多いです。それを作品として美しくて必然性のある言葉に変換していく、という順序で考えています。ただ、どうやって浮かんでいるのかは……わからないな(笑)。でもプロセスとしてはそういう感じですね。


【インタビュー・文/逆井マリ】